実施報告:第16回 秘すれば花の日本の芸能 聴く、打つ、美人の小鼓体験会

10月15日、重要無形文化財保持者に総合認定され、能楽の世界で3人しか数えることのできない女性小鼓方のおひとり、久田陽春子さんをお迎えして、第16回 秘すれば花の日本の芸能 聴く、打つ、美人の小鼓体験会を開催しました。

和室に袴姿の先生。あいにくの雨模様にも関わらず、お着物でお越しくださった方々。いつもとはひと味違う、和のお稽古風景。

凛とした久田先生の佇まいに、みなさんも背筋をスッと伸ばしてご挨拶。

 

最初は小鼓のお話。

小鼓の歴史は古く、約700年前からこの形で演奏され続けています。

様々な打楽器の中でも、引力に逆らって下から上に打つのは、世界中を探しても小鼓のみ。大変珍しい所作だと言われているそうです。

小鼓は、2枚の馬の革の間に桜の胴をはさみ、「調べ緒」という麻の紐を通して組み立てます。

胴には蒔絵が施されているものも多く、先生の小鼓には、蕪(かぶら)の絵柄。

蕪は根が太いため、音が太い=いい音がしますようにという縁起かつぎ。

先生は、素材や仕組み、組み立て方や扱い方など、様々な説明をしながら、胴や革を順に見せてくださいます。

近くで小鼓を見ることも、ましてや組み立て前の状態を見るのは初めての方がほとんど。時折質問をはさみながら、興味深く、膝を進めてご覧になっています。

いよいよお稽古の始まり。

最初に先生のお手本を聞いて、何種類の音があるかを数えます。

正解は4種類。

5本指で打つ〈ポ〉と、人差し指で打つ〈プ〉。これは、革の中央を打つ柔らかい音。

薬指で打つ〈チ〉と、中指と薬指で打つ〈タ〉。これは、革の右下端を打つ高い音。

今回は〈ポ〉と〈チ〉を習います。

まずは手を使って構えの練習。

実際に打つ時には、左手で「調べ緒」を締めたり緩めたりすることで音色を変えます。

そこで、左手は「調べ緒」を持っているように右肩の前で握り、右手で打ちます。

〈ポ〉では、左手は卵ひとつ分ぐらいに握り、先生の「ツ」という声を合図に、みなさんは「ホー」とかけ声をかけ、打ちます。

〈チ〉では、左手はぎゅっと強く締め、先生の「ツ」の合図で「ヨー」とかけ声をかけ、打ちます。

そして「三ツ地(ミツジ)」という〈ポ・チ・ポ〉と3つ打つ組合せを習って、1曲演奏することに。

次は、実際に小鼓を使っての練習。

本革は音が出にくいので、今日は初心者でも音が出る素材の小鼓を使います。

5名ずつ順番に、これまで習ったことを実践。

最初は先生がひとりずつ手をとり、打たせてくれます。

何度か打つうちに「いい音がしてきましたね」という先生の言葉に、嬉しそうな笑顔も。

順番を待つ間は、先生を見ながら、手を使って自主練習。5人揃って打つ時は、かけ声は全員参加で。

中には、ご自身の小鼓をお持ちの方も!

初対面のお隣同士、和気あいあいと教え合う姿もあり、和やかな中にも、真剣に取り組んでおられる様子が窺えます。

いよいよ先生の謡いにあわせて、『高砂』の練習開始。

謡いに気をとられないように注意しながら繰返し練習すると、だんだん様になってきて、最後は各グループごとに、無事にプチ発表会ができました。

実は、今日の『高砂』は、月に2回のお稽古でいうと、なんと半年分を2時間につめこんだという先生の言葉に、一同びっくり!

鳴りやすい小鼓で、簡単バージョンとはいえ、ぎゅぎゅっと濃密なお稽古体験。

先生も「ぜひお祝いの席で打ってあげてください」と、笑顔でみなさんのがんばりを称えてくださいました。

あいにくのお天気でも、先生いわく、湿度が必要な小鼓にとっては、“恵みの雨”。

みなさんの声と小鼓の音が心地よく響く、小鼓日和の贅沢な一日でした。